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「ダダコンペ」とその勝利の記録

  日本独自の「ダダ100周年」企画のひとつに、在日スイス大使館が自ら主催する「ダダ100周年記念アート・コンペティション」があった。「ダダイストになろう」とうたったこの企画は、一般の応募者から主催者にメールで送られた「ダダ作品」の画像や映像を「dada100Tokyo」のFacebookのアルバムに掲載し「イイね!」の数で優勝を決めるというシステムであり、賞品として「ダダ発祥の地」であるチューリッヒへのペアチケットと、現地の最高級ホテルでの2泊とが用意されていた(画像左)。

  まったく偶然この「ダダコンペ」のお知らせを同時に目にしたジャーナリストの織田曜一郎と美術家の高村健志、活動家の東野大地山本桜子は「ダダイストになろう」という主催者の呼びかけに大真面目に応えようと試みた。
  織田は東野・山本の所属する「九州ファシスト党〈我々団〉」臨時総統・外山恒一の「反選挙活動〈ニセ選挙運動〉」の記録動画を撮っており、それらを素材に新しく編集した映像を応募した。政治的には反ファシストである織田の応募作品は、外山の活動を政治運動とも芸術運動ともとれるように編集され、またそれへの賛否の明言を避けるかたちで提出されている。BGMには「前衛」の文脈から切り離されイージーリスニングとして受容された「ジムノペディ」が使用されている。
  その他のメンバーは「織田さんをムダにスイスに送ろう」と思い立ち、人気投票に過ぎない「ダダコンペ」の優勝決定システムを逆手にとり、織田を優勝させるべく、組織票集めの「選挙活動」を行なった。
  「選挙運動」の結果、外山恒一の反選挙活動を記録した織田の映像は、Facebookで最多「イイね!」を獲得した。スイス大使館は織田を「ダダコンペ」優勝者に認定し、日本ドイツ文化センターで開催した授賞式で正式に表彰し、チューリッヒへの航空券とホテルの宿泊権を賞品として贈った(画像右)。
  2016年末、織田は家族とともに無事チューリッヒへ旅立ち、だいぶ自己負担でスイス・イタリアを周遊し、翌2017年始、無事羽田に帰還した。この旅行に織田は外山や東野・山本の写真を持参し、「キャバレー・ヴォルテール」に置いたり、ムソリーニが吊るされたロレート広場で写真を逆さ吊りにするなどのパフォーマンスを行なった。
  「ダダコンペ」に関する詳細な記録は、東野・山本の発行する『メインストリーム』04ほか、まとめ、外山による紹介記事を読まれたい。(文責・山本)

​※(2017/11/28追記)dada100TokyoのFacebookページは削除または非公開となったため、同ページのスクリーンショットを掲載する。

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